Stig Lindberg / Ljungbergs

スティグ・リンドベリの
布について、少し。

スティグ・リンドベリ。1967年の白黒写真。自分がつくった顔のかたちの器に指をあてて笑っている
スティグ・リンドベリ(1967年)。自分がつくった顔の器の、鼻先に指をあてているところ。写真=Bent K. Rasmussen/Nordisk Pressfoto(パブリックドメイン)

個人的に、リンドベリの柄が好きです。何が好きかというと、柄の向こうに人の気配がする感じ、とでもいうか。うまく説明できないんですが、そういうことを少し書きます。

徳島で、マリメッコと北欧の生地を扱っています。
インテリアセンター山田 店長 山田

いま「20世紀北欧デザインの巨匠 スティグ・リンドベリ展」が日本を巡回しています(いわき・横浜高島屋・愛知)。会場のことと、展示で見た柄が生地で手に入る話は スティグ・リンドベリ展のページ に書きました。

ベルサの生地と、仕立てたクッション
ベルサ(Berså/1961)。リンドベリの柄でいちばん知られている一枚です。

もともとは、音楽家になるつもりだった

1916年生まれのスウェーデン人です。陶器メーカーのグスタフスベリで長く働いて、食器からテキスタイル、絵本、包装紙まで、生活まわりのものをなんでもデザインしていた。

もともとは音楽家になるつもりだったそうです。ピアノで身を立てるつもりでいた。それが14歳のとき、薪にする白樺を切っていて、親指に大怪我をします。ピアノは諦めるしかなかった。

療養しているあいだ、することがなくて絵を描きはじめた。そこからこの人がはじまります。

21歳のとき、倒産寸前のグスタフスベリに飛び込んで「雇ってくれれば工場に仕事を作ってみせる」と言い切った。そういう人です。

1959年に日本を訪れ、西武百貨店の包装紙をデザインしています。瀬戸や信楽も歩き、日本の陶芸に強い関心を持ちました。そのとき若い芸術家たちにこう語っています。「古いとか新しいとかでなく、真実であるかどうかがデザイナーにとって最も重要だ」と。

グスタフスベリでは、リサ・ラーソンの才能を見抜いて大学卒業と同時にスカウトしたのもリンドベリです。23歳のリサを工場に呼んだ。そういう目利きでもありました。

スティグ・リンドベリ作品集の書影
『スティグ・リンドベリ作品集』ギセラ・エロン著・本郷若子訳(ISBN 4-939102-71-8)
Herbarium 生地で仕立てたバッグ
Herbarium(ハーバリウム)生地で仕立てたバッグ。

テレビも、絵本も

リンドベリが作ったのは、器と布だけではありません。

1959年には、テレビをデザインしています。画面がくるっと回る、チークの台のテレビでした。3年後にはトランジスタラジオも。

テレビの試作品に手をかけるスティグ・リンドベリ。格子柄のシャツに蝶ネクタイ。1959年の白黒写真
テレビの試作品と、リンドベリ(1959年)。
Photo: Luma AB / Public domain
木の箱の上に、丸みのある画面がのったテレビ。ルマヴィジョン
できあがったテレビ「ルマヴィジョン」。
Photo: Tekniska museet / CC BY 4.0 (resized)

絵本の絵も描いています。1947年、詩人レンナート・ヘルシングの本でした。布の柄を描きはじめたのと、同じ年です。

犬も、飼っていた

リンドベリは、スコティッシュ・テリアを飼っていたそうです。名前はシモン(Simon)。

犬好きな私からしたら、親近感しかないです。

1961年には、その犬の形の貯金箱を作っています。スウェーデンの銀行の、90周年の記念でした。赤と青のプラスチックで、長さは17センチほど。

赤いスコティッシュ・テリアの形の貯金箱。首に銀行の名前の帯。となりにリンドベリの花瓶と角皿
右が、スコティッシュ・テリアの貯金箱。となりの花瓶と角皿も、リンドベリのものです。
Photo: Holger Ellgaard / CC BY-SA 3.0 (resized)

なぜスコティッシュ・テリアかというと、スコットランドの人は倹約家で知られているから、だそうです。鍵は付いていませんでした。いっぱいになったら、そのまま銀行へ持っていく。そういう貯金箱です。

スコティッシュ・テリアのことは、犬のブログに書きました。黒い子と白い子 ── スコティッシュ・テリアとウエスティの話 →

白樺の街で育った人が、白樺の葉の柄を作った

工場では、リンドベリが来るとわかると皆が大事な作品を隠したそうです。そそっかしくて、うっかり壊すことがあったから。

将来の妻グンネルに初めて会ったとき、美しさに見とれて自転車を制御できなくなり、白樺の木に激突した。後に「あの事故を一度も後悔したことがない」と語っています。

白樺は、この人に三度出てきます。育ったのは「白樺の街」と呼ばれるウメオ。ピアノを諦めることになったのも、白樺を切っていた事故でした。そして妻に見とれて突っ込んだのも、白樺の木。

ベルサの葉は、その白樺です。

そういう人が、この布を作りました。

スティグ・リンドベリのテキスタイル

うちにあるのは、8つの柄です

Ljungbergs / 8 patterns

スウェーデンのユンバリ社(Ljungbergs)がプリントしている、リンドベリの布です。

1948年に、エリック・ユンバリという人が起こした会社です。ヨーテボリの北にあるフローダで、古い木工所を買い取って始めました。

エリック・ユンバリ。プリント台に手をついて立っている白黒写真。手前にヴィオラ・グロステンの柄の型が置かれている
フローダの名刷り師、エリック・ユンバリ。手前にあるのが、ヴィオラ・グロステンの柄「Oomph」の型です。
写真:Ljungbergs Textil

当時スウェーデンでいちばん腕のいい刷り師だと言われた人でした。もとは技師で、リトグラフの製版もやり、そのうえ織りと紡ぎの学校も出ている。スヴェンスク・テン社に頼まれて、ヨセフ・フランクの生地を刷っていたのもこの人です。柄によっては、その柄のために新しい布地から作ったこともあったそうです。

ここから出ていったのは、家で使う布だけではありません。ヨーテボリにあるドラーケンという映画館の緞帳も、ニューヨークの国連本部にあるスヴェン・マルケリウスの柄「ピタゴラス」も、フローダのこの工房で刷られたものです。

ベルサの生地をテーブルクロスにしたところ 生地になったらいいな、と言っていたら ── ベルサの話 Bersa / 1961 ・ 3色 ハーバリウムの生地で作ってもらったかばんが4つ並んでいる 一番に浮かんだ柄 ── ハーバリウムの話 Herbarium / 1947 ・ 4色 グラツィア・ポカ ブルーの生地 よく見ると、みんな変 ── グラツィア・ポカの話 Grazia Poca / 1949 ・ 2色 グレーのフルーツボックスの生地の上に、赤を張ったパネルを置いたところ まんま、りんご ── フルーツボックスの話 Fruit Box / 1947 ・ 2色 ポテリーの生地の柄 陶器デザイナーの、本領発揮 ── ポテリーの話 Pottery / 1947 ・ 1色 メロディの生地の柄 毒々しいのは、雰囲気 ── メロディの話 Melodi / 1947 ・ 2色 ユンバリ バルバス ブラック コットンリネン生地 直線が、一本もない ── バルバス Bulbous / 1947 ・ 1色 ユンバリ プランタン ブルー コットンリネン生地 フランス語で「春」 ── プランタン Printemps ・ 1色

色から、えらぶ

16 colours

どれくらい買えばいいか

生地は10cm単位でお切りします。作りたいものから、長さの目安をどうぞ。

いちばんよく出ているハーバリウム(10cm ¥1,980・税込)で計算した、縫い代を含む目安です。柄によって10cm ¥1,320〜¥2,970と幅があります。仕上がりのサイズが決まっていれば、必要な長さをお調べします。お電話(088-642-5828)でも承ります。

※ ピアノを諦めることになったけがと、グンネルさんに出会ったときの話は、スウェーデンのデザイン紹介サイト Mother Sweden の評伝より。ウメオが「白樺の街」と呼ばれていること、テレビ(ルマヴィジョン)と絵本、犬の貯金箱は Wikipedia(スウェーデン語版「Umeå」「Stig Lindberg」「Lumavision」「Skotten」)より。ユンバリの沿革は Wikipedia(スウェーデン語版「Ljungbergs Textiltryck」)と同社サイトより。日本語は当店の訳です。

音楽家になるはずだった人が、倒産寸前の工場に飛び込んで、白樺の木に激突して、日本を旅して、リサ・ラーソンを見つけて、1982年にイタリアで亡くなった。その人が生涯かけて作った柄が、今もこうして布になっています。

柄の向こうに人の気配がする、というのはそういうことだと思っています。

ユンバリ リンドベリ生地 一覧を見る

10cm ¥1,320〜(税込)から、お切りします。サイズや仕立てのことは、遠慮なく聞いてください。

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