フィンランドでは、結婚式は夏に開かれます。6月と7月に集中していて、多い人だと一夏に5件はしごすることもあるそうです。そういう国で「婚礼のバラ」と名付けられた柄が、1964年に生まれました。
最初に見たとき、これはいいな、と思いました。甘くない、力強い、どこか鋭いバラ。バラらしくない、と思う人もいるかもしれない。でもそこがいい。
ウニッコとヴィヒキルースは、同じ抗議から生まれた姉妹柄です。どちらもマイヤ・イソラが描いた。でも、まったく違う花になりました。ウニッコが世界で一番有名な花柄になった一方で、ヴィヒキルースは「婚礼のバラ」として静かに愛され続けています。
アルミ・ラティアが花柄を避けていたのには、理由がありました。本物の花のみずみずしさを、布に刷った柄で本当らしく写すことはできない。そう考えていたそうです。
マイヤ・イソラの答えは、写すのをやめることでした。ウニッコは、花を写生した柄ではありません。花の抽象画として描かれています。ヴィヒキルースも同じです。バラを写したのではなく、細い線だけで組み立ててある。この描き方が、あとで出てくる「バラだと気づかれない」につながっていきます。
残りの6枚は、今もあまり知られていません。8枚のうちの2枚が、こんなにも違う運命をたどった、というのが面白いと思っています。
同じ年に、日本ではオリンピックと新幹線、フィンランドでは8枚の花柄。ヴィヒキルースは、そういう年に生まれた柄です。
同じマイヤ・イソラが、同じ年に描いた。なのにウニッコとヴィヒキルースは、まったく異なる描き方をしています。
大きな花びらの形が、色の面として広がります。遠くから見ても花がはっきり見える、強い存在感のある柄です。見る人の目をぐっと引きつけます。
花の輪郭も、茎も葉も、細い線で描かれています。その線が縦に並んでリズムを作る。近くで見るほど、整ったかたちの心地よさが伝わってきます。
面で見せるウニッコ。
線で見せるヴィヒキルース。
甘くない、どこか鋭い印象は、この線の描き方から来ていると思います。花びらが細い線で描かれているからこそ、やわらかくなりすぎない。それがこの柄の毒気です。
同じデザイナーがこれだけ違うものを同じ年に描いた、というのが、マイヤ・イソラという人の面白さだと思っています。
マイヤ・イソラは、同じ1964年に、もうひとつバラの柄を描いています。マーライスルース。「田舎のバラ」という名前です。
いちど、手元にあるバラの生地を3枚並べてみたことがあります。
奥のマーライスルースは、花がひとつずつ大きくて、葉も太い線で描かれています。のびやかで、名前のとおり素朴です。右のヴィヒキルースは、同じバラなのにぐっと小さくなって、縦にきれいに並んでいます。そして左下のピックルース。ヴィヒキルースとよく似たかたちのバラが、さらに小さく、びっしり詰まっています。遠目には、もう花には見えません。
大きく描いて、形を整理して、小さくしていく。並べて初めて、ヴィヒキルースがちょうどその真ん中にいることがわかりました。同じ人がこんなふうにバラを描き分けていたのだと思うと面白いです。
実店舗でよく言われることがあります。「これってバラだったんですね」と。
遠目には、抽象的な繰り返し模様に見えます。近づいて、じっくり見て、細い線で描かれた花びらに気づく。そのとき初めて「花だったのか」とわかる方が多いです。
ヴィヒキルースという名前は、フィンランド語の vihki(結婚式)と ruusu(バラ)からできています。
知れば知るほど好きになる柄というのが、世の中にはあります。ヴィヒキルースはそういう柄だと思っています。
フィンランドの、住まいのことを書いているサイトが、古いマリメッコの生地のなかで「見つけたら宝物」と呼べる5つの柄を挙げていました。ヘルシンキ=ヘルシングフォシュ、ナッレ、ムスタランマス、プケッティ、そしてヴィヒキルース。
宝物と呼ばれるのは、その頃の生地が手で刷られていたからだそうです。生地の端(耳といいます)に Printex や Marikangas と入っているものは、みんな手刷り。洗濯の表示が入るようになる1970年代なかばより前の生地です。そのうえ日に焼けたり色があせたりしやすいので、きれいなまま残っているものが少ない。
そこでもヴィヒキルースは「ウニッコの姉妹」と書かれていました。花が柄に使われていなかった時代に、同じところから生まれた2つだから、という理由です。
出典:kotona.com「An old Marimekko fabric could be a treasure」
ヴィヒキルースの並び方は、じつはとてもシンプルです。丸い花と、細い茎。それが縦にまっすぐ並んでいるだけです。
シンプルな並びなので、カーテンやテーブルクロスのように広く使っても、柄が前に出すぎません。派手ではないけれど、毎日目に入っても疲れない。たぶんこの並び方のおかげだと思っています。
ヴィヒキルースの生地は、いま4色ご案内できます。くすんだやわらかいトーンで、鮮やかすぎない。それがヴィヒキルースの良さで、ウニッコとはまた違う落ち着きがあります。
4色とも非継続色です。それでもこの秋、3色ぶんが新しく入ってきました。
ヴィヒキルースは生地だけでなく、小物にもなっています。手のひらに載る大きさのキーチェーンやピンバッチ、白黒のスカーフ、ベージュのトートバッグ。
贈り物にされる方が多いのも、この柄らしいところだと思っています。
クッションカバーやのれん、ファブリックパネルに向いています。
額に入れるだけでも、窓にかけるだけでも雰囲気が出ます。そのまま包んで贈ることもできます。
額や木枠そのものは扱っていません。市販のものをお使いください。枠の大きさごとに何cm買えばいいかと張り方の手順は、布を、ポスターのように飾るにまとめてあります。
フィンランドの夏に、婚礼の花として名付けられた柄。遠目にはバラと気づかれない、でも知れば知るほど好きになる。ウニッコと同じ日に生まれて、まったく違う道をたどってきた柄です。
生地は10cm単位から。小物と器もあります
(有)インテリアセンター山田
〒779-3123 徳島市国府町観音寺483-1
TEL 088-642-5828・FAX 088-642-5827
9:00〜18:00(水曜定休)
※実店舗もございます。お近くの方はぜひお立ち寄りください。